その男は手拭いを頭に巻き、
ヤレの効いたdickiesのペインター(※1)を
穿いていた。
その風貌は完全に外仕事の人のそれ。
およそ屋内作業メインのPAを
生業として生きる人でわないと
一見してわかる。
彼の名が
タツル
だというコトを知るのは
もうあと何年後かのコト。
してココ村門でのPAとは、
ハウリングとの闘いである。
そもそも声以外は基本的にoffマイク。
本来であれば、
各々の音を、なるべくその音だけを拾い
外に出すのがPA。
唄のマイクに他の音も入ってしまっては
唄を上げた時に、その他の音も上がって
しまうのだ。
それがハウリングの起点である。
が、このハコは全ての音が
店内を自由気ままに飛び回り、
それがいたる所のマイクに吸い込まれていく
仕組み。
最悪なのである。
すなわち
ココでいうPA業とは
いかにして
マイクから唄だけを増幅して
外に出してやるかを考えるコトとなる。
そのためにミキサーに備えられている
ツマミやフェーダーをイヂリ倒すワケである。
そんなコトを知らない自分は
そうやって格闘するタツルくんを見て
当時は、ヤキモキしたと思う。
ま、たいして覚えてないっつーコトは
気にならなかったのかもしんないケド。
ー続くー
余談になるが、PAとは楽器と同じで
同じ機材で同じバンドであっても
PAが代わると音も変わる。
その人の好みが
そのまま音に出るのだ。
(※この場合の好みとはバランスのコト)
当然、
自分とタツルさんでもやはり変わってくる
正解も不正解も人の数だけあると
思っているので、
その瞬間x2を楽しんでもらえればと思う。
なので、
自分にハマる演者さんもいれば
どーやってもハマれない演者さんもいる。
また、
どーしてもハメきれない演者さんもいる。
仕方なく到達せず仕舞いで本番を迎える
そんな日もある。
リハでよかったのに
本番では
しっちゃかめっちゃかになる日もある。
悔しい日もあれば
充実感で満たされる日もあり、
毎回毎回それに向かって卓をさわっている。
自分のルールを信じて
かつ何度も確かめて、
プレイヤーの求める言葉にないモノを
外に出せたらと思っている。
※1…カーハートに次いで有名な
アメリカのワークブランド。
中でも874(型式)のパンツは
90sを生きた自分としても外せない
ファッションアイコンのひとつ。
-MUSIC CLUB MURAKADO-