その日は朝から賑やかだった。
それもそのハズ。
なんつったって
ーSHY・村門ライブー
ですから。
いやいや。
山王さん。
富山のお祭りカブリ。
しかし自分にとっては
そんなコトはどーでも良いのである。
今日は、、、。
戦争である。
そんな面持ちがあったかどーかは
忘れたが
とりあえずリハ時間に村門入り。
今日、祭りだから〜、
なんか
つられていっぱい入ったらイイねー。
アレ?ここお祭りじゃないんすかー?
みたいなねー。
とかなんとか言って
にこやかに話す
サトウタツヤのクソつまらん話を
軽くいなしつつ、
自分の視線の端は
既にタツルさんを追っていた。
タツルさんは黙々と
ドラムをセットしたり
マイクスタンドを立てたりしている。
今日はタオルを巻いていない。
店内には
同じように出演するであろう人が2名。
ちょうど自分達よりも先に
リハをしている。
多分SHYさんでわない。
まず、ラップだし。
フリースタイルだし。
タツルさんに「ゴリ」と呼ばれる
その人は、
見た目はゴツめにも関わらず、
物腰も柔く、一目でタツルさんへの
リスペクトが伺える。
その横には
さらに大男がいる。
被っているキャップが
完全に悲鳴をあげている。
ハチ周りがドSだ。
きっともし何かあったら
まずは彼らが相手なのだというコトは
瞬時に予測できた。
そんな彼らのリハも終わり
いよいよ自分達のバンドの番が来た。
何はともあれ
ライブはライブ。
リハはリハとして
シャキッとやらねば。
おおかたの予想に反して
呆気ないほど筒がなくリハを終えた。
とりあえず心の折れる出来事もなく終え
胸を撫で下ろしながら、機材をまとめる。
そこへPA業務を終えたタツルさんが
徐に近寄ってきた。
こちらを見るでもなくひと言。
あんにゃ、なんしとるが。
え。
因縁としか受け取れないようなひと言。
あ、、、
あ。
(え、片付けてる最中っす!ってコト?)
(それとも自分!ベース弾いてるっす!とか?)
(だとしたら見てなかったってコト?)
(いや、そんなワケねーし。)
(だとしたら見た上で、ショボ過ぎてってコト?)
(なんて返そう。無難に すんませーん。か?)
(え、耳聞こえんすか? 挑発は違うな。)
(大雑把に 元気です! とか。)
様々な憶測が脳内を駆け巡り、
咄嗟の身動きを勝手に奪われてしまった自分。
見兼ねたサトウタツヤが答える。
ペコはフツーの会社員だわ。
(あ、普段の仕事を聞いていたのか。)
この見た目で?
タツルさんは
すでに会話の相手を自分から
サトウタツヤに切り替えて質問を重ねた。
まー、クビになってないってコトは
いちおうやれとるってコトなんじゃない?
と勝手な考察を挟んで返すサトウタツヤ。
その貫禄たるや
もはや
ネゴシエーターである。
オレも昔、
一回だけ会社員やったコトあるなぁ。
とタツルさん。
どうやら機嫌は悪くなさそうだ。
マジで!
何しとったん?
ネゴシエーターが大袈裟に振る舞う。
彼はこういった太鼓持ちが大得意なのだ。
ヤマトよ。
トラック乗って。
やっぱオレもピアスがどうとか言われたわ。
と、続くタツルさん。
あー、ピアスね。
それが仕事になんか影響あるかってのねー。
今日の鳴りも絶好調である。
リムの効きがハンパない。
イイぞ!
ネゴ!
その調子!
ま、この世には世間体とかあるらしいから。
あー、
世間体ねぇー。
ネゴの素晴らしい太鼓持ちの甲斐もあり、
その場を切り抜けた。
ネゴサトウとは今後とも
イイお付き合いをしていきたいと再認識する。
そんなこんなで
あれよあれよと時間は過ぎ、
あっという間にライブも終わった。
結局、
タツルさんとの初めての会話は、
雑談なのにネゴシエーターを通すという
不甲斐無い結果に終わった。
前々から、
ハコの人と仲良くなるのが
1番大事っすからねー!
なんつって、
偉っそうにメンバーに語っていた自分。
蓋を開けたら
そのメンバーに
ネゴシエーションを依頼したカタチで
幕を閉じた。。。
なんとも情けなかった。
しいて発した言葉はというと、
「え」と「あ」。
一青窈ですら「ええいああ」なのに。
そんな
一青窈、足らずな1日だった。
ー続くー
-MUSIC CLUB MURAKADO-