去年の三月の半ば、キナコが忽然と姿を消した。
キナコというのは、家で飼っていた三毛猫の雌なのだが。
とある日の午後に、畑の猿石(これについては説明を割愛しよう)の上に座っているのを見て以来、彼女は消えた。
裏の森で狸にでも襲われたか、懐っこい気性であったので誰かに連れ去られたか、と思って裏の森を探したりした。交通事故に遭った場合には近所の人が知らせてくれるはずだが、そんな知らせもなく、どこにも痕跡なし。
今現在は去年の秋に動物処分場から引き取って来たあずき♂がいる。俺の家は築70年越の中古民家で、冬になるとネズミが入ってくるから猫は必須アイテムだ。
ふと最近、俺の家から100mくらい先に見える丘の上の家の縁側のガラス戸越しに「キナコっぽい猫が居る」のを見たと知人。
キナコは三毛だがアメリカンショートヘアーが混じっていて尻尾は白と銀色の縞ガラ。
「尻尾もそうだ」と知人。
「家の中で外へは出さずに飼っている」と知人。
あれから一年半、真相は如何に。
俺の杞憂ならば良いのだが。
丘の上の家は婆さんと娘の二人暮らしで、町内の行事に来ることもなく、よく知らない。散歩の時あいさつを交わす程度。なんとなくここ最近出会わない気がする。
さて。